さらさら、さらさら。
竹に願い事を吊るすなんて日本の風習は面白いよな。
しみじみした様子で呟く声に、振り返りもせず息を細く吐いた。
肺に溜めた空気を煙と一緒に送り出して、肩越しに一瞥をくれる。
予想した通りの青い瞳がこちらを見つめていた。
7月に入って、タナバタとかいう日本の行事があるからと、夕方からでかい竹を飾り付けていた。
夜中に改めてそいつを見上げていたら、背後から声をかけられたという訳だ。
「元々は中国なんだろ。知らねぇけど」
「ハハッ。ゆかりに勧められて願い事を書いたけど、日本語でも中国語でもないから叶うか不安だな。確かこの辺に……」
聞き齧った知識を差し込んで会話を終わりにしようとした目論見があっさり躱されたので、軽く苛つきを覚える。
カサカサと笹の葉を分けながら自分の短冊を探す仕草に大型犬のイメージがよぎった。
「本来は願い事じゃなくて努力する誓いだって、お嬢が言ってたろ」
「ああそうだった。俺も努力しないとな!」
破顔と共に視界に飛び込んできた短冊には、”May everyone's wishes come true”の文字。
俺は深く息を吸って立ち上がると、吸い殻を携帯灰皿へ突っ込んだ。
「ビリー?」
その呼びかけと同時に、ゆっくり棍を構えて。
「テメェが『努力しないと』って言ったんだろうが」
そう言った俺の顔は、イラついていただろうか。縋るようであっただろうか。
「……オーライ。良いさ、それがお前の願いなら」
青い瞳の男はそう言って、軽く拳を握り構えてみせた。
風に揺れる、竹の梢の、一番先で、俺の誓いは揺れている。
-Fin.-
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