エピローグ
帰る道々、あの男に遭った。
ひどく困惑した表情で、納得はいかない、だが、納得せざるを得ない、という顔をしていた。
俺は足を引きずりながら、速度を緩めず、変わらぬペースでタワーに向かう。使い物にならなくなったエモノは、そのまま、あの橋の下に捨ててきちまった。俺の代わりに。
俺は、やらなきゃいけないことがあるから。
やらなきゃいけないことが待っているから。
あの男と、すれ違う瞬間。ヤツは足を止めた。俺も、足を動かすのをやめた。ヤツはじっと、俺を見つめて、何か言いたげに、口の端を少し動かした。言わなければいけない、そして、尋きたくてたまらない、そう、言いたげに。
聞きたくはなかったから。
暫し、俺は黙ってヤツを見、そして、口を開いた。
「あの人は、笑っていただろう」
それは問いではない。確信。
「ああ」
ヤツはそれだけ言うと、帽子のつばを少しだけ下げた。
「俺も、お前も、結局、あの人を超えられないのさ」
吐き捨てるように、そう言ってやった。
中途半端な感情に、生かされるようなあの人じゃない。
だから俺も、覚悟したんだ。
笑いながら。
あの人と同じように――。
-Fin.-
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