とは書いてみたものの。「もういい加減いいだろ?」という思いが半分はあり。 私が考える、ギースの抱えた「わだかまり」の中で、一番根っこの深いものが父親であるルドルフさんへの思いです。 解説の1でも申し上げたように、個人的にギースの両親ってのはとても仲が良く、幼い頃のギースは、ちょっと憧れもしたんじゃないかな、という思いがありまして。 自分もああいう風になりたい。自分もああいう家庭を築きたい。まぁそこまで思ったかどうかは知りませんけど、笑顔で見詰め合う夫婦像は、「良きもの」としてギースの記憶に残ったのではないかと。 彼が居なくなってからも、母の父への想いは変わらず、却ってそれが母への「思慕」という感情よりも、父への「憧憬」という思いに繋がったのではないかと。コンプレックスも多少はあると思いますけど、この時期はどちらかといえば、「やっぱり父にはかなわない」くらいで。 きっとマリアさんはちっちゃい頃から「お父様のようになりなさい」とは言わず「あなたも(あなたなら)できますよ」と教えていたと思うから。 その母の死に際に、初めて明らかになる父の所在。それを聞いたギースは何を思ったか。 ひょっとしたら、「父のためにも、母のためにも、会って母のことを伝えたい」と思ったのではないでしょうか。きっと、父も母のことが気がかりなはずだと。 その後、シュトロハイム城での大まかなストーリーはみなさんご記憶のとおり。異母弟であるクラウザーに叩きのめされ、ギースは父もクラウザーもすべてを憎んでしまう。 信じていた父が母を裏切ったという思いと、「自分はああはならない、なりたくない」という思い。しかし、成長を重ねると、己が忌み嫌った男性という性の、短絡的で粗野でどうしようもない部分が、己のものとして感じられるようになって来る。「強さへの執着」や「思い通りにならない身体」への苛立ち。 併せて、力を身に付け、当時は無かった「情報」や「見識」を手に入れると、あの時の父の行動は、彼なりの最良の選択であったのだということが判る。だけど……その父の選択を、彼の弱さ故と卑下し、許すことができない。父の「思い」を認められない。 そして、強くなるたび、自分と父を比較し、それでも、母は父を愛していたと思い出し、劣等感に沈む。 でもさ、もういい大人なんだから、自分のことも、他人のことも、認めるところは認めてくださいヨ、ギース様、と。個人的にはそんな思いで描きました。 彼の心の中で、ずっと泣き続けていた子供。 心の奥底に封印され、外へ出せずに鳴り響いていた、あの、子供の泣き声は……。 父のことが大好きであったということ、父も自分を愛していてくれていたということ、それを認めたいという、ギースの心の叫びを表してみたかったものです。
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